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踏み込んで訳すか 敢えて表面的な訳にとどめるか

先日、中国の習主席のスピーチ原稿を翻訳の授業で取り上げました。
香港返還20周年記念の一連の行事に参加するために、
中国の習主席が香港国際空港に降り立って、その場で行った短いスピーチです。

平易な言葉ですが、
全体的にはむずかしく感じる人もいたようです。

講評を終えた後、受講生の方から
「ここではこのように表現していますが、本当はこういうことを言っていると思うのですが…」
「表面的ではなくて、言わんとしていることを訳出すべきではありませんか?」
という質問を受けました。

なるほどね、よく考えて下さっています。
とても良い質問です。

この質問に、私は次のように答えました。

このスピーチは中国の元首である習主席のものです。
あなたの原文の理解は、私も正しいとは思いますが、
もしそのような理解が間違っていたらどうしますか?
踏み込んだ翻訳をして、余計な要素が入り込んだら、どうしますか?

実務翻訳者はジャーナリストではありませんから、
公人の政治的な発言やスピーチ、
外交関連の発言の訳は、
正しく理解することはもちろん必要ですけれども、
踏み込み過ぎない、自分の解釈を主張すべきではないと考えます。
敢えて表面的な訳に留めなければならないケースもあると思います。

皆さんは、どうお考えでしょうか。
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Re: 話したことすべてが情報

shira様
コメントをお寄せくださり、ありがとうございます。
「踏み込んで訳すか 敢えて表面的な訳にとどめるか」http://takadasensei.blog.fc2.com/blog-entry-1336.html
この文中で私が言わんとしたことは、政治家の発言や国際・政治・外交関係の翻訳に関しては、敢えて表面的な訳(極端な場合は直訳)にとどめることもあるということです。

shiraさんがおっしゃるように、「まわりくどさも、不明瞭さも、とりとめのなさも思い違いもすべて原文(原発言)の情報の要素」であり、それを翻訳者の立場で斟酌することは許されません。
しかし、通訳者には異なる事情もあります。
通訳者は、発言者の話を聞きながら、理解・分析し、キーワードやキーフレーズを把握し、何を言わんとしているのか、話のエッセンスをつかみ、通訳していきます。
その結果、shiraさんのコメントにありましたように、『両言語を解する人が「いやあ、君の通訳を聞いたほうがすっきりとわかったよ」』ということはあり得るのです。
もちろん私も、発言者が逡巡している様や、それに伴う不明瞭な表現を、なるべく正しく訳出するのが、理想だと考えますが…

話したことすべてが情報

こんにちは。

まわりくどさも、不明瞭さも、とりとめのなさも思い違いもすべて原文(原発言)の情報の要素だと思います。

両言語を解する人が
「いやあ、君の通訳を聞いたほうがすっきりとわかったよ」
と言ったとしたら、これは危険な兆候だと思います。
プロフィール

高田先生

Author:高田先生
中国語教育と中国語通訳・翻訳業及びその教育、中国語関連書籍の執筆に従事しています。
通訳・翻訳スクールや大学、社会人向け講座等における豊富な教育経験にもとづき、中国語学習者、中国語通訳・翻訳学習者に役立つ実践的なアドバイスを差し上げたいと思います。

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